六話
六話 少女と賢者の石強奪作戦




何故か食堂の空気が重くなる。



アレイスター「皆も知っての通り、ここの館長をやっている、アレイスター・クロウリーだ。
早速だが、我々が探している賢者の石について、
いくつか説明をさしてもらう。」



館長は黒板を持ってきた。



稲瀬「ここ食堂よ。
粉が舞うわ。」



アレイスター「安心しろ。
職人に頼んだ食用チョークだ。」









アレイスター「まず、賢者の石が幻想郷の何処にあるか?
と言うところから説明さしてもらう。」



稲瀬「あれ、クロちゃん
先に一人で幻想郷行ってきたの?」



アレイスター「ああ。

幻想郷には博麗大結界という大きな結界が張ってあるんだ。

まあ結界を張った本人、
博麗の巫女さんは人間でね、当の昔に寿命を迎えちまったらしい。

でだ、非常に強引なやり方ではあるが、結界をちょっとだけ破らせてもらった。」



千代女「それはあまり
宜しくないのではないか?」



アレイスター「確かに、あの結界は現世と幻想郷の境界でもある。

下手したら幻想郷は崩壊してしまうだろう。

だが私は魔術師だ。
そんなミスは冒さない。
破ったところは丁寧に修復したよ。


で、しばらくあちらに滞在していたわけだ。」



錬「それで?」



アレイスター「そうだな、幻想郷ではこちらで言う『常識』というものが通用しないみたいだ。


皆が皆、異なった形相をして、異なった能力を持ち、ただ戦闘の際のルールは皆同様、『スペルカード』
というものを使用している。」



奈波「なんだそりゃ。」



アレイスター「そうだな、
では問題だ奈波。

幻想郷には妖怪が存在するが、本来の妖怪の存在意義とは何だ?」



奈波は首をかしげる。



リュカー「人間を襲うことよ。」



奈波「おう、さすが妖怪やってる奴は違うねえ。」



錬「…?」



リュカー「次に言ったら殺すわ。」



アレイスター「奈波、それは言ってはならない言葉だ。

次にそれを言った時は私もお前を許さん。」



奈波「すまんかった。」



アレイスター「話を戻そう。

リュカーの言ったとおり、妖怪の存在意義とは、人間を
襲うことだ。

しかし、博麗大結界が張られてから、妖怪は人間を
襲えなくなり、存在意義が薄れてしまったんだ。

そこで当時博麗の巫女が
編み出したのが、さっきの『スペルカードルール』
になる。

スペルカードルールにあるスペルカードとは、自らが持っている能力の言わば
必殺技のようなものだ。

個々のスペルカードの
共通点は、発動させると
弾幕状の攻撃が飛びかう。

つまり、スペルカードとは本来その美しさで競うものらしい。

スポーツのようなものだ。」



奈波「だが、俺たちは
スポーツをやりに行くわけじゃないんだろう?」



アレイスター「無論だ。

だが一度幻想郷に入ってしまうと直接相手を攻撃する大きな魔術なんかは全て
スペルカードになってしまう。

いずれにせよ、
スペルカードルールのことは頭の中に入れておいてほしい。」



稲瀬「了解したわ。
で、賢者の石は結局何処にあるのよ?」



アレイスター「向こうにはな、
『紅魔館』という館がある。

そこにはパチュリー・ノーレッジという魔法使いがいてな、
どうやらそいつが賢者の石を所有しているらしい。

だが少し残念な知らせだ。

我々の思い描いている
賢者の石とは少し別物のようだった。」



錬「と、言うと?」



アレイスター「パチュリー・ノーレッジが
持っている賢者の石は簡単に日+月+火+水+木+金+土、これら七色の力で成り立っている。

これだけで賢者の石を造り上げるとはね、さすがは
魔法使いといったところか。

でもね、これは不完全なんだ。」



月花「『生命の情報』…
ですか。」



錬「生命の情報?」



アレイスター「その通り。
では錬、人の魂はさっきの『月+火+水+木+金+土』
この七色の力で造ることは出来るだろうか?」



奈波「錬、わかるか?」



錬「全然。」



アレイスター「ちょっと難しかったな。
答えはNOだ。

確かに、『木』の部分になら多少の生命に関する情報はあるだろうが、それでは小さすぎるんだ。

あの賢者の石の七色の力はすべて自然によっているところがある。

だが、人は自然から外れている。

草や花は虫に食べられ、

虫は鳥や小動物に食べられ、

鳥や小動物は大型の動物に食べられ、

大型の動物が死ぬと土へ帰り、

土によって草や花が生まれる。」



稲瀬「生態系…。」



アレイスター「この生態系こそが自然の循環だ。

だが、大型の動物にあたる『人』はどうだ?

生きていれば植物も、虫も、小動物も、大型の動物も食べてしまうのに、
死ぬときは火葬されるか、棺に入れられてしまう。

文化的になり過ぎた『人』は土へ帰ることはないんだ。

生命の循環がそこで止まる。」



そこにいた少女たちは夕飯のことも忘れ、館長の語ることをただ真剣に聞いていた。



アレイスター「つまりだ、人の
生命は自然の七色では成り立たない。

あの賢者の石には『生命の情報』が足りないから、
『完全な物質』には程遠いワケさ。」



リュカー「じゃあどうすんのよ?
結局賢者の石は夢物語で終わっちゃうの?」



アレイスター「私は魔術師だ。
そんなことでは終わらせない。

程遠いとは言ったが、八割近くは出来ているのさ、あの賢者の石はね。

だったら、残りの二割は
私たちで完成させてしまえばいい。
ただそれだけのことだ。」


錬「ふーん。
で、その魔法使いに『八割の賢者の石』は譲ってもらえるの?」


館長の表情が少し曇る。



アレイスター「そう、それだ。
今私が一番話さねばならない事だ。

・・交渉はしてみたんだが、断られるどころか危うく殺されるところだった。」



月花「だからあんな慌てて帰ってきたんですね。」



奈波「逃げて来たんかい。」



アレイスター「仕方あるまい、
『使い魔』を置いてきてしまったんだ。
そんな私は毘沙門天にだって勝てはしない。」



千代女(いれば勝てるのか?)



奈波「つまり、こうなった以上強行手段しかなくなったわけだな。」



錬「強行手段?」



稲瀬「盗むわけね、賢者の石を。」



錬「えっ。」



アレイスター「さあ諸君、これが『賢者の石強奪作戦』だ。」


館長は黒板を裏返す。


出てきたのは紅魔館の見取り図だった。



千代女「ここまで調べましたか。」



リュカー「ただの変態ね。」



アレイスター「まあ、そう言うな。
正体がバレるまでに何とかここまでは調べることが出来たんだ。

私からすれば汗と涙の結晶さ。」



錬(バレたんだ。)


稲瀬(だから殺されかけたのね。)



アレイスター「恐らく賢者の石はここのブワル図書館に
封印されてるか、結界が
施されていると思う。

ここがパチュリー・ノーレッジの
住みかのようなものだからな。」



稲瀬「作戦ていうくらいだから上手くその魔法使いとドンパチやらずにすむ方法があるんでしょうね。」



アレイスター「ああ、もちろんだ。」


そう言って館長は何やら
怪しげなお札を取り出した。

黄色い札と、紫の札。



アレイスター「この黄色い札をこの食堂の中心に張る。」



館長は次に、奈波へ紫の札を張る。



奈波「何だこりゃ。
それよか何で俺に張る?」



アレイスター「この空間より拒絶されし者、直ちにこれに従え。」


アレイスター「空間転移!!」



ブワッと風が吹いたと思うと、そこに奈波の姿はなかった。



錬「今何をしたの?」



月花「空間転移、瞬間移動のようなものです。
普通は自分に作用する術なんですが。」



アレイスター「この黄色い札は
空間に干渉する。
そして、この紫の札は黄色い札に拒絶されている。

要するにこの紫の札を張られたものは空間から拒絶され、強制的に外へ放り出されてしまうわけだ。」



千代女「少し卑怯な気はするが、これで館の連中を
外に放り出すわけか。」



アレイスター「ああ、館の中にはメイドさんがかなりいるが、飛び抜けて強い奴は4人しかいない。

その4人を押さえれば他のメイドは幻術でも使って眠ってもらおう。」



その時、ちょうどよく(?)奈波が帰ってくる。



奈波「ひどい目に遭った。」



稲瀬「お帰り。」
アレイスター「お帰り。」



錬「外に放り出した後は?今の奈波みたくすぐに戻って来ちゃうんじゃ…。」



アレイスター「任せろ。
意地の悪い結界を張っておく。


さて諸君、大まかな内容は理解して頂けただろうか。異論の在るものはいるかな?」



稲瀬「錬はどうなの?
急にこんな危なっかしい
展開になってしまったのだけれど…。」



錬はしばらく黙っていた。



錬「…私もね、幻想郷に
旅行でも行くと思ってたら、まさか集団窃盗の誘いを受けるなんて。


でもね、決めたんだ。
賢者の石を手に入れるって。
それに、心のどこかで楽しみにしている自分がいる。皆の足引っ張るかもしれないけど、

…私行くわ。」



アレイスター「うむ、
それでは幻想郷に行くぞ。準備しろ。」



リュカー「いつ行くの?」



アレイスター「明日。」



奈波「いや、いくら何でも早くないか?」



アレイスター「異論は一切認めん。
さあ早く晩飯の用意だ。」



稲瀬「こうなったら止まらないのよ。
クロちゃんは。」



錬「そうみたいね。」







それぞれの思いは、
やがて一つの発端として
幻想郷に事件をもたらすのであった。










アレイスター「では頼んだ。」



月花「ええ、吸血鬼の2人は私が何とかしましょう。」





















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