二十六話
二十六話 少女と少女達の過去






歩いていたのは、
血の海だった…。






紅い液体は
足首ほどまで深く、
すでに形を失った生物の
肉塊と共に大地を
どこまでも覆い尽くす。





鉄の臭いしかしない。


いや、
それすら感じ取れぬ程の
濃い血液の生臭さ。





少女は歩きながら、
ただ溜め息を吐いていた…。









「助…けて…。」






ふと後ろから少女を
呼び止める声が聞こえる。




これだけの惨状だ。

そんな幻聴が聞こえても
可笑しくはない。





そんなことを思うと、
二度目が聞こえてくる。







「助けて…。」






二度、同じ台詞。

さすがに幻聴では無いか。




少女は立ち止まり、
やっと後ろを向く。







「助けて…。」






アレイスター「まさか、
こんな場所で生きている
人に出会うとは…。




いや、
お前人じゃないな…!

魔族か!?」







「死にたく…ない。」





     セイ
アレイスター「『生への執着』
が在る…?



お前…

さては、
元は人間だったな。





こんな所で
何をしている?」






「抑止…力…。」






アレイスター「抑止力…だと?

禁術を犯したのか?



そうか、
この惨状はお前が
作り出したんだな…。」






「助…けて。」







アレイスター「残念だがね、
そのウツワはもう持たん。

魂を留めていることは
出来ないよ。



君は…、
ここで死ぬ。」







「フッ、フハハハッ!!!



私が…ッ…ゲッホ、

この私が死ぬだと?」






アレイスター「ああ、
その身体は治すことが
出来ても、

その身体自体に魂を
収めることは出来ない。



その抑止力による傷が
その証拠だ。

魂と肉体の繋がりが
断ち切られている。



じきに、
魂と肉体の分離が始まる。


つまり、君は死ぬ。」








「ハハッ、
この私に死が存在するとは…。

今までは上手く行けて
いたのに…。


ゲホ…ゲッホゲッホ!!



おのれ!
抑止力ッ!!!!!」






アレイスター「何で
魔族になったんだ?

何故そこまで自分を
苦しめている?




お前は…何なんだ?」






「理由など…
とうの昔に忘れました。



私が
死ぬことは許されない。

貴方の言うとおり、
この惨状は私が原因です。



私が死ぬということは、
これだけの死を
無駄にするということ!!



踏み台にしてきた
この死体の山から降りる
なんて…


私には出来ない。





私は…ゲッホ!


私は、
必ずや『世界との契約』
を果たしてみせると
この屍に誓う!!




抑止力ごときに、
この望みを
断たれてたまるものか!!!!!!!!」











少女は気を失う。






アレイスター「はぁ…、
仕方ない。


神楽、お前の身体…
コイツに貸すぞ…!」































「はっ!!」






アレイスター「おお、起きたか。

身体の調子はどうだ?」








「ここは…?」






アレイスター「妖月館。
私の館だ。



その身体だと、
外見は人間そっくりだな。」






少女は自分の身体に
多少の違和感を感じる。





「これは…。」






アレイスター「神楽、
私の使い魔の身体だ。


お前用の形にするのに、
丸一日かかったんだぞ。

初めは違和感を感じる
かもしれんが、
同じ魔族の身体だ。

すぐに慣れる。」






「はぃ…。」






アレイスター「そうだ、
お前名前は?」






「忘れ…ました。」






アレイスター「忘れた…。

困ったな。
性格上、名前が無いと
やりずらいんだ。




よし、
後で私が名付けよう。


先に飯でも食え。

そこの
テーブルに置いてある。」





「はあ…。」






少女は
テーブルに手をつけ、
手探りで皿を探す。







アレイスター「…!

お前見えてないのか!?」





「えっ…、はい…。」






アレイスター「ミスったか?

確かに眼球はちゃんと
移植したのに…。」






「ああ、違います。

これは…
『転生』による魂への
代償…です。」






アレイスター「代償だと?



だが今回
転生術を行なったのは
この私だ。


代償が発生するなら、
それは私へかかるはず
じゃないのか?」






「転生したのは…
これで八回目です。」







アレイスター「八回…だと?


はっ、おいおい…
いくら何でも限度が
過ぎる。



お前は何故…

いや、何でもない。






だが初めて逢ったときは
君の眼はしっかり
こちらを見ていたが。」






「魔術で
視力を確保していました。



今は魔力がすっかり
無くなってしまっている
ので…。」







アレイスター「…仕方がない。

口を開けろ。」







「へ…?


むぐっ!!」






アレイスターは少女の口に飯を
運ぶ。






アレイスター「こういうのは確か『あーん』と言ったかな?




ほれ、あーん。」






「むぐぐ…
(恥ずかしい!)。」








アレイスター「…何だ。

魔族も泣くのか。」






少女の頬はいつの間にか
濡れていた。

ただ、嬉しかった。






アレイスター「恥ずかしがる事はない。

それはまだ人間としての
心が残っている証拠だ。



大切にしておけ。」



























アレイスター「月花!」






月花「え?」






アレイスター「お前の名だ。

今日からお前は
『鏡水月花』だ。」






月花「鏡水…月花。」






アレイスター「月花、
今日から
お前は私の助手だ。


異論は在るか?」






今思うと、
それはきっと必然だったと思う。






月花「いいえ。

鏡水月花、
これより貴方の助手、
喜んで
引き受けさして頂きます!!!!!」









そう、

あの日から

魔術師、
鏡水月花は始動した。



























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