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※小解説は最下部に
†詩†
窓際に置かれた 万年筆
漆黒に 金色の飾りとペン先
つずられる文字は 深い青で
もう何年も 使っている･･････
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思いを綴られし封筒
悲哀漂う 中は緑の便箋幾枚も
封の青い蝋を溶かせし “月の涙”
数滴落として 白銀に溶け消える
故人の“思い”は 開封された
ﾜﾀｸｼには
文面を読み解くような気はなかったが･････
溢れる思いはﾜﾀｸｼの予想を陵駕した
青色インクの文字達が宙を舞い
喜びから悲しみ
後悔から感謝まで
ありとあらゆる思いの“記憶”が、こみ上げる
―――全ては、そう。
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貴女を思った彼の手紙でしたよ、
―――signoraフィレッタ＝ロッソ
驚いた顔をなさらずに。
このﾜﾀｸｼに、
死者と生者の見分けがつかぬ訳がないのですよ。
素性を偽ろうとも、無意味、というもの。
言ったでしょう、良い運だと。
彷徨う亡霊は数多。
しかし、ﾜﾀｸｼの下へ辿り着けるのは、極わずか。
生前、彼の手紙を見つけた貴女は、
しかし
何人にも開けられぬよう施された魔力の封の前では、
手紙を受取るべき貴女にさえ、開ける事はできなかった。
どうぞ手にとって御覧なさい。
･････彼は貴女に、これを読んで頂きたくは････なかったよう
ですね。
ええ、恥、という概念です。
書かれたるは、
一つの恋物語が幕を閉じた、その後の男の心模様
解ってはいる 終焉を迎えたと
しかし男には その感情を殺しきることは叶わなかった
最後に溢れるのは、感謝の言葉ばかり･････
だからこそ
彼は貴女に告げることなく、言葉をただ書き綴りました。
声にして言ってしまえばどれだけ楽か
しかしてそれは、別の幸せ掴んだ貴女を困らせるばかり。
文面は悔いてもあり、懺悔でもあり、
感謝でもあり、優しさでありました。
――――誤解なさらずに
彼は彼で、幸せな人生。
なぜなら、彼は死後、ﾜﾀｸｼのところには訪れず、
アルエ＝ラ＝シエッラの下に逝ったようですよ。
ええ、確認いたしました。
大層、貴女を心配しておられたとのこと。
････泣きたいのなら、お泣きなさい、signora。
今はその時です。
そして最後は、微笑んで。
･････さて、
この手紙が開封された今、
貴女ももう彷徨わずに。
アルエ＝ラ＝シエッラの下へ逝かれなさい。
―――テン君、白百合の水鏡をここへ
アルエの下まで、導きましょう。
それではさあ、瞳を閉じて。
zero･･･zero･･･････zero
大丈夫。
彼には必ず 会えますから
窓の外
輝く stella 導く光
ワタクシの心も 導いてくれるかい？
降りそそぐは 真冬の gioiello(宝石)
Un giglio su un torace(胸の百合)
彼と彼女の 手向けの花に･････
†小解説†
ﾋﾞﾝｷｰﾉ=ｼﾞｮｾﾞﾌ、ｼﾘｰｽﾞの【緑の便箋】、4部作ものになりま
したが、これにて完結です。少々長い本編になりましたが、
最後まで聴いて下さった皆様、有難うございました。
――既にお気づきの方もおられるかもしれませんが、この【緑の便箋】のお話は、＜歌詞＆導化師達の唄＞の「彼の人へ―per Lei―」と少々繫がっていたりします････。
前回、封印を解くために“月の涙”を調合したﾋﾞﾝｷｰﾉは、
依頼の封筒を開封致しました。そしてその依頼人、ﾌｨﾚｯﾀ=ﾛｯｿ
は実は手紙の書き手の受取人、即ち、既にこの世の者ではあ
りませんでした。
一度は心を寄せた二人。何かが原因で別れた二人。
しかし、彼は思いを忘れず、手紙を見つけた彼女も、開け
られぬ封に、死してなお、未練を残したのでした。
ﾋﾞﾝｷｰﾉは、依頼を遂行し、彼女を彼の元まで、導くのでし
た。
BGM：【冬の陽光/SYNFOREST/Northland Fantasy/雪と氷の美
しき別世界】＆【樹氷/SYNFOREST/Northland Fantasy/雪と氷
の美しき別世界 】
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