2011年05月07日(土)【3まるでエルフが出て来そう】
〈前回の末尾文〉
私は手を引かれるままに
その人に付いて行った
しかしやはりそれどころではない
その人の唇が触れた指先が熱い
―――毒の、せいだろうか？
……………………………………
――――っ。
目の前が発光したかと思うと
私は机の前に居た
意味が分らず停滞した思考から
ようやく回路は回復した
「･････えと･････三時限目は･････
英語････だったな」
私は口元を確認
大丈夫、よだれは出ていない
鞄から教科書とノートを引き出す
図らずも、苦手教科であるな
･････はあ
しかし
私はどのタイミングで夢への一線を踏んだのだろう
起きている時に、空想していたはずなのにね
予鈴がこの現実感を助長する
辟易が身体に染み渡る
教卓に年長者がどんと居座る
みんな下を向く
何を考えているんだろう
ええ、私は今
――――――目を開けながら、夢の中
黒板の一点をぼんやり眺めると
そこから枝が生えてきた
蛍光灯は無くなって
まるで“森”の中のような暗さに
深呼吸をする
ああそうだ
深緑の香りは青臭くシトラスで
踏みしめる草は柔らくい
小さな花たちを踏まないように
避けながら
さくさくさくと小走りに
つながれた手が温かい
でも指先が痺れてきた
『痛むのでしょう？待っていて
もう直ぐ着くから』
銀色の髪のその人は
風に長髪をなびかせて
優しく微笑みながら言ってきた
目が合って
気恥ずかしさに、うつむいた
その、どこかへと行く間
リスやシカ
蝶も見掛けた
『どうしたの？
珍しいものでもあったのかな？』
私は気づかぬうちに
きょろきょろと辺りを見ていたようだ
『まるでリスが巣から外を確認するときのようだね』
･･････笑われてしまった
でも
その憂いを帯びた微笑みは
私の日々の辟易を
和らげてくれたのは確かなのだ･････
＜次回に続く＞
21:29
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