zalloの独り言
2012年08月06日(月)
【喫茶店巡りのロアルとセデル】
太陽耀くキンコー通りに
街並み揃えた家々並び
隠れた名店、パティが存在

ロアル「夢見がちとはよくいったもので、心底惚れた女がいない。磨いた真鍮やルース(彫金用原石)の付いた宝飾品以上に陶酔できるものがないとはこれ如何に」

セデル「美味いパンをほうばるすんでに難しい話はやめてくれ。そいつはワインの時にやるもんだ」

ロアル「それなら私はラムにしてくれ」

セデル「どうとでも」

ロアル「この前猫の目にスピネルを付けたんだが、これがなかなか愛らしい――ここのベーコンはなかなかだ」

セデル「そいつはいいが両目が青のスピネルじゃあ芸が無い。オッドアイで右をペリドットにするんだな。――水だし珈琲は深みが違うな」

ロアル「いや違う、女の話しだ」
セデル「あれの気が無いというなら、斯くして人間に興味がないのじゃないか?」

ロアル「言い得て妙だ。だが鍛金で人型を絞るのは好きだぜ」

セデル「そいつは無機物だろう。気持ちはわかるが生きちゃいない。勿論我々は作る際には万全なる魂を込めるわけだが」

ロアル「作ることで一生を終えられるのなら、それでいいと思うてあいだからな、私は。だか、無性に愛したくなるときがある―――おい、そのソーセージは私のなんだが」

セデル「ケチケチするな、私のトマトを食べればいい」

ロアル「いらん」

セデル「それからさっきも言ったが難しい話しは昼休みにするものじゃない。そろそろ制作時間だ」
ロアル「それじゃあ明日はランテラ通りの喫茶に行こうか。私は今夜は忙しい」

セデル「ランテラか。少し歩くがいいだろう。あそこは私も気になっていた。―――マスター、いいパンだった、明日以降また来るよ」

マスター「そりゃどうも。今度店に飾る猫をお願い出来ないか?あと妻に花のブローチを」

ロアル「勿論だ。兎でもいいんだぞ?」

マスター「猫は幸福を呼ぶらしいぞ」

ロアル「…?ほう」

セデル「ブローチなら任せつくれ。紫陽花なんてどうだ?七宝で色を使おう。」

マスター「任せるよ。つぎはサービスするよ」

ロアル「ありがとう、それじゃあごちそうさま!」

セデル「ごちそうさん」



キンコー通りは作家の街
ありふれたものは作らない
難しい事は考えない
他人に迷惑をかけないのなら
思うように生きるが徳

街を行こう
今日も作ろう

鍛金彫刻師ロアル
鍛造彫金師セデル

二人の作家の一文節


10:20
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