2015年06月27日(土)【【序-序】傍観者の悲壮録 薔薇姫の悔恨】
深淵の空に広がったのは 煌々たる熱波と共に
赤でした
乙女はそれをただ佇み 見ることしか
できませんでした
宮内から悲鳴が聴こえます
天使たちがどよめきます
騎士が警護を固めます
民衆は嘆き逃げ惑います
乙女の唇が震えます
その息が荒くなります
胸の鼓動は頂点に達します
乙女の瞳が揺らぎます
しかしその瞳が捉えるのは
城下の劫火ではありませんでした
乙女は胸に手を当てます
胸のアミュレットは輝きます
煌々と赤く輝きます
――背中の八枚の羽は開きません
六枚の羽の天使が乙女に声をかけます
しかし乙女は返事をしません
――乙女は声を失いました
今夜はオルガンが鳴りません
･････････
あの日城下が燃えた
首都は半分が消え
人々は加護を信じなくなった
それが優に300年前のこと
(【序-１】傍観者の悲壮録 薔薇姫の悔恨 へ続く)
16:14
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