2015年07月01日(水)【【序-１】傍観者の悲壮録 薔薇姫の悔恨】
赤い髪が鮮烈だったのです
青年の髪は長く 煌々と輝き まるで
炎のよう
微笑みは温かく しかし凛々しく
端整な面立ちに 微笑まれれば
人間ほど感情の起伏の無い 天使の心に
――八枚羽の乙女の心に
ぽっと灯りが 燈るのも
無理は無かったのです
青年は荘厳な宮殿の中
髪に似合う橙色の導師服
乙女の前に跪き
―――初めまして 薔薇姫様
流麗なる声の響きに
見上げて合う目の赤銅色に
乙女はとうとう赤面した
青年が差し出した手に
乙女は静かに手を乗せた
青年が恭しくキスをした乙女の指には
愛らしい桃色薔薇が現れた
お付の天使たちも
人間の大臣たちも驚いた
青年はこれが手品ですよと微笑んだ
それがあまりに屈託が無くて
先ほどの流麗さとは
全く別の無邪気な笑顔に
――乙女は知らぬうちに笑っていたのです
お付の天使たちはさらに驚き
どよめきました
大臣たちは満足げに頷き合い
微笑みあう二人を見守りました
・・・・・・・・・・
先の騒乱後
人間のみによる統治の腐敗にうんざりした天のお偉いお方は
ある日
人間の大臣たちの上に天使を降臨させました
八枚羽の天使を筆頭に
その日より天使の加護で
国は統治され始めました
その八枚羽根の天使が
赤い髪の青年導師に出会ったのは
優に４００年前のこと
(【序-２】傍観者の悲壮録 薔薇姫の悔恨 へ続く)
17:06
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